いろ電話研究所の研究日誌

ODN IPフォンを Acrobits Softphone で使う

2022-08-04 11:40
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前回の記事で ODN IPフォンを MizuDroid で使う方法を紹介した。

今回もまた ODN IPフォン の設定情報を紹介する。

ODN IPフォンは SoftBank系IP電話基本料金無料SIP情報ありISPフリーとまさに 神サービス なので、あらゆる接続情報を全力でシェアしたい。

この記事では有料のアプリ、Acrobits Softphone から ODN IPフォンを使う方法を紹介する。しかし、先に書いておくと、Acrobits Softphone と ODN IPフォンは相性が悪く、使えなくはないものの、トリッキーな設定が必要になるので常用はオススメできない。

Acrobits Softphone とは

Acrobits Softphone はチェコ共和国Acrobits社が開発するスマホ用アプリで、各種あるスマホアプリでは珍しく買い切りの有料アプリとして公開されている。同社は Groundwire という別の SIPアプリも販売しているが、Softphone は DID(1番号1アカウント)で使う個人ユーザ向け、Groundwire はビジネスホンの内線用として使うビジネスユーザ向けに設計されている。

いくつかの IP電話プロバイダの公式アプリは Acrobits社が開発、各社に OEM提供しており、知らないうちに同社の開発したアプリを使っているユーザも少なくない。

今回は Softphone の設定を紹介する。

ODN IPフォンとは

再掲になるが、

ODN IPフォンは、ISP の ODN が同社のユーザ向けに提供している 050番号を使った IP電話サービスで、申込みが必要なものの基本料金はかからず利用できる。ODN の ISPアカウントは、NTT東西のフレッツ光ネクスト向けであれば 1,320円/月(税込み)(2年間は 1,100円/月(税込み))とライバル社と比べても比較的安価なので、ODN IPフォンを使うために現在使っている ISP からの乗り換えを検討してもよいと思う。ちなみに私は、ODN IPフォンを使いたいために ISP を 2,200円/月(税込み)の IIJ から ODN に乗り換えた。

ODN は元々、日本テレコムという JR系の電話会社の提供する ISPサービスだったが日本テレコムが SoftBank に買収されたため、現在は SoftBank の ISPサービスの一部になっている。

SoftBank は光コラボの SoftBank光、NTT東西フレッツ光ネクスト向けの ISPサービスである Yahoo!BB光、そして個人・法人向けのフレッツ光ネクスト向けの ISPサービスである ODN、法人向けのフレッツ光向けの ISPサービスである SpinNet と歴史的な理由もあって 4つの ISPブランドが併売されているが、Yahoo!BB光と ODN は似たようなサービス内容でどちらも 1,320円/月(税込み)なので、IPoE IPv6 が使いたい、BBフォンを使いたい(光BBユニットという独自の CPE をレンタル(レンタル料金が必要)する必要がある)場合は、Yahoo!BB光、ODN IPフォンを使いたい場合は ODN を選べば良い。

同じ SoftBankグループの SoftBank光や Yahoo!BB光では 050番号を使った IP電話サービスとして BBフォンを提供しているが、BBフォンを利用するには 513円/月(税込み)の光BBユニットのレンタルが必要で、さらにいわゆるナンバーディスプレイのようなサービスを使う場合は番号表示サービス 330円/月(税込み)のオプションが必要となり、基本料金は無料であるものの、実質、有料オプションと言ってもよい仕様になっている。

BBフォンと違って ODN IPフォンの場合は汎用の SIP規格を使うので、自前で用意した SIP電話機やスマホの SIPアプリを使うことができ、かつ契約には ODN の ISP契約が必要であるものの、ODN IPフォンの利用自体は他の回線からも可能なので、SoftBank系に通話料無料で ISPフリーで使える、というある意味隠れた名サービスと言える。

なお、通話料が相互に無料になる相手は、ODN IPフォン(電話番号050-20xx-xxxx が多い)、BBフォン(050-1xxx-xxxx)、Dialpad(050-1xxx-xxxx)だけだが、逆に掛けてもらう時は KDDI-IP電話や KDDI系の CATV系事業者(ケーブルプラス電話)からも通話料無料になる。

というサービスで設定情報は郵送で送られてくる。

ODN IPフォンの設定情報

こちらも再掲になるが、ODN から送られてくる ODN IPフォンの設定情報がこちら。

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必要なのは SIPサーバ名、IP電話番号、IP電話パスワードの 3点のみ。ほかは不要。

Acrobits Softphone の権限の付与

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Acrobits Softphone を立ち上げると、個人情報の取り扱いについての同意を求められるので内容を確認して同意できるなら 同意 をタップする。

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端末のマイクへのアクセス権限の付与を求めてくるので、NEXT をタップする。

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許可 をタップする。

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端末の電話機能と通話履歴へのアクセス権限、連絡先へのアクセス権限も求められるので 許可 していく。

Acrobits Softphone の設定

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新しい SIPアカウント をタップする。

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タイトルに識別のためのわかりやすい文字列(ここでは ODN IP と入力した)、SIPアカウントに IP電話番号、SIPパスワードに IP電話パスワード、ドメインに blu.odn.ne.jp(設定情報の SIPサーバ名)を入力する。

詳細設定をタップする。

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着信方法を プッシュ通知 にする。

NATトラバーサルをタップする。

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メディアを STUN にする。

STUNサーバーに stun.l.google.com:19302 を入力する。

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グローバルIP の確認を 外部 にする。

アウトバウンド プロキシをタップする。

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有効に設定されました、を ON にする。

ホストに blu.odn.ne.jp を入力する。

右上の をタップする。

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左上の登録状況のアイコンが緑になれば SIP REGISTER に成功している。

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登録されました になる。

なお、Acrobits Softphone は挙動に少しクセがあって、Wi-Fi環境などではうまく登録できないことがあるが、その場合の回避方法はあとで紹介する。5G/LTE環境の場合は、以上の設定だけで使えるはずだ。

コーデックの設定

ODN IPフォンではコーデックとして ITU-T G.711μ(PCMU) を使うのでコーデックを設定する。

右上のハンバーガーボタンをタップ、設定、アカウント、さきほど設定したアカウント(ODN IP)、詳細設定をタップする。

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オーディオコーデックの WiFi用のコーデックをタップする。

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G.711 μ-law を有効化されたコーデックに加える。

戻るボタン をタップする。

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モバイルデータ用のコーデックをタップする。

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G.711 μ-law を有効化されたコーデックに加える。

右上の をタップして設定を保存する。

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WiFi環境で SIP REGISTER できない場合

以上の設定を行っても、WiFi環境下だと SIP REGISTER できないことがある。

これは、ネットワークの接続に使っているルータの NAPT の挙動と Acrobits Softphone、ODN IPフォンの相性が悪いためで、ここでは回避手段を紹介する。

もし、お使いの IPv4ネットワークに v6プラスなどの、一部の指定のポートしか使えない回線を使用している場合、使えるポートを把握する。v6プラスの場合は、ルータの設定画面から確認できる。また、IPv6アドレスから計算してポートを教えてくれるサイトがある。

使えるポートを把握したら、設定、アカウント、該当のアカウント、詳細設定、ハックとタップする。

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SIPポートに、使えるポートの中から、比較的数字が大きそうな番号の先頭の数字を割り振る。例えば、24800-24815 が使えるポートに含まれていれば、24800 にする。

これで SIP REGISTER できるようになる。

お使いのルータによっては、NAPT時に必ずポート番号を変える挙動をするものがある。

ルータの設定を変えられるのであれば、ポート番号を変えずに NAPT する設定を加える。例えば、YAMAHA RTXシリーズを使っている場合、nat descriptor masquerade unconvertible port コマンドで指定できる。

上の 24800-24815 と設定を合わせたいので、以下のようなコマンドを発行する。(NATディスクリプタ1 を使用している場合)

nat descriptor masquerade unconvertible port 1 udp 24800-24815

これで SIP REGISTER できるようになる。

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なぜ、このような設定を加えないと SIP REGISTER できないかというと、Acrobits Softphone が STUN を使って外部IPアドレス、ポートを把握しても SIP REGISTER の SIP Header の Viaヘッダで、内部IP、内部ポートを通知してしまうためだ。

ODN IPフォンは、ViaヘッダにプライベートIPアドレスが含まれる場合、その IPアドレスは無視するが、ここで通知したポート番号については無視せず使うような挙動になる。

しかし、ルータの NAPT でポート番号が変換されると、通知したポート番号と、実際にパケットが出ていくポート番号が不一致になってしまい、戻りのパケットを受け取ることができなくなってしまう。

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他のアプリ(例えば Grandstream GS Wave など)では、NATトラバーサルに STUN を使うように設定した場合、Viaヘッダで通知する IPアドレス、ポートも、実際にパケットが出ていくアドレス、ポートを使用するようになっている。このため、ODN IPフォンの SIP Proxy から見た場合、アプリが NAT内部に居るかは関係なく、グローバルIPアドレスからアクセスしているように見える。

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5G/LTE回線の場合は、端末にグローバルIPアドレスが直接振られないものの、グローバルIPアドレスはキャリアのルータで端末ごとに占有で割り当てられてポートが変換されない単純な NAT として動いているため、ポート番号の不一致が生じず、SIP Proxy と疎通することができる。

ルータの NAPT 設定を変えられない場合、残念ながら、Wi-Fi環境で使うことはできない。

発信と着信

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BBフォンを収容した Grandstream WP820 の電話番号へ発信。

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すこし見づらいが、ODN IPフォンの電話番号(050-2008-xxxx)から掛かってきていることがわかる。

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逆の BBフォンからの着信。BBフォン(050-1389-xxxx)から掛かってきている。

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通話中の様子。しばらく通話していると、パケットロス率とジッタ値が表示されるようになる。

コーデックに ITU-T G.711μ(PCMU)を使っているので遅延も感じず、音質がとても良い。

まとめ

Acrobits Softphone は有料アプリではあるものの、数少ない日本語表示が可能なアプリということで一定数のユーザが居ると思われる。

正直、GS Wave が使えるのであれば設定のしやすさを含めて、GS Wave に軍配が上がるものの、Grandstream社はあまりメンテナンスに積極的とはいえず、いつ公開がとまってもおかしくないので、バックアッププランとして Acrobits Softphone は常にキャッチアップしていきたい。このアプリにどれほどの需要があるかわからないが、今後も機会があれば他の IP電話プロバイダーでの設定例も紹介していく予定だ。

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※1 : TLS が使えない。ポート番号を 5060以外に変えられない。SRTP が使えない。G.729aコーデックが使えない。
※2 : G.729aコーデックが使えない。


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