この記事ではパソコンで IP電話を使うためのソフトウェア、MicroSIP を紹介する。設定例は、ODN IPフォン を使うが、今後、050 plus や SMARTalk での使い方も機会があれば紹介したい。
ODN IPフォンは SoftBank系IP電話、基本料金無料、SIP情報あり、ISPフリーとまさに 神サービス なので、あらゆる接続情報を全力でシェアしたい。
IP電話でデファクトスタンダードとして使われる、SIP による IP電話のソフトウェアを実装するためのライブラリとして pjsip がある。pjsip はライブラリなので、ユーザが直接使うことはできないので、これを GUI での操作として取り扱うためのソフトウェアの一つがこの記事で紹介する MicroSIP になる。
pjsip は広く使われていて、オープンソースの IP-PBX として非常にメジャーな Asterisk でも、SIP を取り扱うためのモジュール、chan_pjsip として実装している。(初期の頃のバージョンでは、pjsip を使わない、chan_sip も使っていた)
MicroSIP は IP電話に必要な最低限の機能だけをシンプルに実装したソフトウェアで、個人的にもっとも長く使用している IP電話ソフトウェアなのでとてもオススメできる。日本語で使用できる。
再掲になるが、
ODN IPフォンは、ISP の ODN が同社のユーザ向けに提供している 050番号を使った IP電話サービスで、申込みが必要なものの基本料金はかからず利用できる。ODN の ISPアカウントは、NTT東西のフレッツ光ネクスト向けであれば
1,320円/月(税込み)(2年間は 1,100円/月(税込み))とライバル社と比べても比較的安価なので、ODN IPフォンを使うために現在使っている ISP からの乗り換えを検討してもよいと思う。ちなみに私は、ODN IPフォンを使いたいために ISP を 2,200円/月(税込み)の IIJ から ODN に乗り換えた。ODN は元々、日本テレコムという JR系の電話会社の提供する ISPサービスだったが日本テレコムが SoftBank に買収されたため、現在は SoftBank の ISPサービスの一部になっている。
SoftBank は光コラボの SoftBank光、NTT東西フレッツ光ネクスト向けの ISPサービスである Yahoo!BB光、そして個人・法人向けのフレッツ光ネクスト向けの ISPサービスである ODN、法人向けのフレッツ光向けの ISPサービスである SpinNet と歴史的な理由もあって 4つの ISPブランドが併売されているが、Yahoo!BB光と ODN は似たようなサービス内容でどちらも 1,320円/月(税込み)なので、IPoE IPv6 が使いたい、BBフォンを使いたい(光BBユニットという独自の CPE をレンタル(レンタル料金が必要)する必要がある)場合は、Yahoo!BB光、ODN IPフォンを使いたい場合は ODN を選べば良い。
同じ SoftBankグループの SoftBank光や Yahoo!BB光では 050番号を使った IP電話サービスとして BBフォンを提供しているが、BBフォンを利用するには 513円/月(税込み)の光BBユニットのレンタルが必要で、さらにいわゆるナンバーディスプレイのようなサービスを使う場合は番号表示サービス 330円/月(税込み)のオプションが必要となり、基本料金は無料であるものの、実質、有料オプションと言ってもよい仕様になっている。
BBフォンと違って ODN IPフォンの場合は汎用の SIP規格を使うので、自前で用意した SIP電話機やスマホの SIPアプリを使うことができ、かつ契約には ODN の ISP契約が必要であるものの、ODN IPフォンの利用自体は他の回線からも可能なので、SoftBank系に通話料無料で ISPフリーで使える、というある意味隠れた名サービスと言える。
なお、通話料が相互に無料になる相手は、ODN IPフォン(電話番号050-20xx-xxxx が多い)、BBフォン(050-1xxx-xxxx)、Dialpad(050-1xxx-xxxx)だけだが、逆に掛けてもらう時は KDDI-IP電話や KDDI系の CATV系事業者(ケーブルプラス電話)からも通話料無料になる。
というサービスで設定情報は郵送で送られてくる。
こちらも再掲になるが、ODN から送られてくる ODN IPフォンの設定情報がこちら。
必要なのは SIPサーバ名、IP電話番号、IP電話パスワードの 3点のみ。ほかは不要。
これが起動した状態。普段遣いしているものなので、インストール直後とは表示内容が少し違う。
Windows であればタスクトレイに常駐しているので、アイコンをクリックすると画面の右下に立ち上がってくる。
右上の、▼ をクリックする。
アカウントの追加 をクリックする。
アカウント名は識別用なのでなんでもよい。(ここでは ODN IP とした)
SIPサーバとドメインに、blu.odn.ne.jp と入力する。
ユーザ名に設定情報の IP電話番号、パスワードに IP電話パスワード を入力する。
保存 をクリックする。
右上の、▼ をクリック、設定をクリックする。
ODN IPフォンは NAT超えの設定が必要なので、STUN を設定する。
STUNサーバにチェックを入れ、stun.l.google.com:19302 と入力する。
保存 をクリックする。
左下のステータスがオンラインになり、SIP REGISTER できたことがわかる。
ODN IPフォンではコーデックとして ITU-T G.711μ(PCMU) を使うのでコーデックを設定する。
右上の、▼ をクリック、設定をクリックする。
コーデックは全アカウントで共通なので、G.711 μ-law を有効欄の一番上に配置し、保存 をクリックする。
コールウェイティングは NTT東西で言うところのキャッチホンのことだが、非対応なのでチェックを外す。
システム起動時に実行にチェックを入れておくと、Windows が起動したときに自動的に常駐するようになる。
スマホに収容した Lala Call の電話番号へ発信。
通話中の様子。ODN IPフォンの電話番号(050-2008-xxxx)から掛かってきていることがわかる。
スマホに収容した Lala Callアプリから ODN IPフォンの番号宛に発信。
Lala Call の電話番号(050-7xxx-2500)から掛かってくる。
Lala Call 側がビットレートの低い G.729a などのコーデックを使っているので音質については評価できないが、遅延などは感じない。
パソコン用の IP電話ソフトウェアは、たくさん種類がありそうで意外と無くて、10年前ならもっと選択肢はあったかもしれないが、2022年現在も開発が続いているのは今回紹介した MicroSIP の他に、AGEphone、X-LITE/Bria、Zoiper、3CX くらいしか残っていない。
新しいソフトウェアを見つけるたびに試しに使ってみるものの、常に戻ってくる地がこの MicroSIP という、個人的に鉄板ソフトウェアの一つになっている。
MicroSIP は動作に必要なライブラリが一式すべて含まれているので、自身のパソコンにインストールして使う以外にも、USBメモリに入れて持ち歩くこともできる。また、ヴィデオ通話を使わないのであれば、通話のみに機能を絞った MicroSIP-Lite もある。
ODN IPフォンを設定して感じたのが、ODN IPフォンは着信時の SIP URI に、SIP Domain でも Outbound Proxy でもない、システム内部で使っていると思われる IPアドレスを使った到達性のない SIP URI を設定してくる。MicroSIP では着信履歴から折り返す場合、SIP URI の @ より後ろの部分は無視して、前半の Username部のみを自身の SIP Domain に組み合わせて発信するので、折り返しも問題なく行える。
ソフトウェアを開発していると、どうしても新機能を実装したいという要求が出てくる。実装済みの機能のバグを直すより、新機能を実装することはワクワクするし、ユーザコミュニティからのフィードバックも得られる。しかし機能が増えるということはユーザから見れば設定項目が増えることに繋がり、その後の保守の中でバグを含む可能性が高くなってくる。
多くのソフトウェア開発者は、この新機能を実装するという魅力に抗えず、どんどん機能を増やしていってしまう。しかし、この MicroSIP は必要最低限の機能は実装しつつ、IP電話の動作に必要のない機能は実装しない、というポリシーを貫いており、個人的にここが IP電話ソフトウェアだけでなく、あまねくソフトウェアの中でも気に入っている点で、そしてまた見習いたい点でもある。
ODN IP | 050 plus | イオン050 | ひかり電話 | SMARTalk | ippi | その他 | ||
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GS Wave | アプリ | note | 050 plus | イオン050 | 執筆予定 | 執筆予定 | ippi | TELNYX |
MizuDroid | アプリ | ODN IP | 050 plus | イオン050 | 執筆予定 | SMARTalk | ||
MicroSIP | PCソフト | ODN IP | 050 plus | 執筆予定 | 執筆予定 | ippi | TELNYX | |
YAMAHA NVR510 |
FXS ATA | ODN IP | 設定不可※1 | 設定不可※1 | ひかり電話 | SMARTalk | ||
GS HT802 | FXS ATA | ODN IP | 050 plus | イオン050 | ひかり電話 | |||
GS GXP1625 | SIP電話機 | note | 050 plus | 執筆予定 | ひかり電話 IPv6 |
SMARTalk | ippi | |
GS GRP2613 | SIP電話機 | note | イオン050 | |||||
GS WP820 | Wi-Fi電話機 | note | 050 plus | イオン050 | ||||
Poly Edge B30 |
SIP電話機 | 執筆中 | 050 plus | イオン050 | ひかり電話 | |||
Poly VVX250 |
SIP電話機 | ODN IP | 050 plus | 執筆予定 | ひかり電話 | SMARTalk | ippi | |
その他 | Acrobits Softphone Sipnetic Calls |
Acrobits Softphone Sipnetic (設定不可※2) |
Sipnetic Acrobits Softphone |
※1 : TLS が使えない。ポート番号を 5060以外に変えられない。SRTP が使えない。G.729aコーデックが使えない。
※2 : G.729aコーデックが使えない。