いろ電話研究所の研究日誌

無料SIP URIサービス、ippi を Grandstream GXP1625 で使う

2022-08-22 11:23
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これまでの記事で NTTレゾナントの 050 plusFUSION SMARTalk に接続する使い方を紹介した、米国ボストンGrandstream社の SIP電話機、GXP1625(PoE非対応版の GXP1620 も設定は同じ) で今度は無料の SIP URI を使った IP電話サービス、ippi に接続する設定方法を紹介する。

Grandstream GXP1625 /GXP1620 とは

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GXP1625 は廉価グレードIP電話機で、SIP 2回線を収容できる。価格的には GRP2613 よりちょっと安いくらいで、液晶は白黒。

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この機種も PoE に対応しているので、PoEハブに接続すると配線はスッキリする。リテールパッケイジには ACアダプタも付属していたので、PoEハブが用意できない環境では ACアダプタで利用することもできる。PoE に非対応なのが兄弟機の GXP1620 でその他の機能は GXP1625 と同じ。

ippi とは

再掲になるが、

ippi という SIPプロバイダーは 2007年にフランス、パリで創業した企業、Worldline Communication SAS社の事業でメインの事業としては月額固定の DID SIPアカウントの払い出しを行っている。

有料プランへのステップアップを狙ったユーザ獲得の入り口として無料プランを用意しており、SIP URI の発行と SIP URI を使った VoIP to VoIPコールのみ、無料で使えるようになっている。電話番号を使った外部の PSTN との通話には、月額9.99~29.99€ の有料プランにアップグレードする必要がある。

というサービスでカンタンにサインアップできるのでアカウント(と、SIP URI)を取得しておく。

Grandstream GXP1625 の設定

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Grandstream GXP1625 が起動したら(3分くらい掛かるので気長に待つ)、次画面というボタンを押してまたしばらく待つ(1分くらい掛かるので気長に待つ)と、IPアドレスが表示される。

表示された IPアドレスにブラウザからアクセスすると、管理画面が開く。アクセスできないときは、ブラウザの URL欄が https になっていないか確認する。

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デフォルトのパスワードは、ID、パスワードとも admin になっている。

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パスワードをデフォルトのものから、複雑なものに変更しておく。

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管理画面にログイン直後の様子。まだアカウントが設定されていないので SIP登録が NO になっている。

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アカウントアカウント1(またはアカウント2)、一般設定 へ進む。

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必要事項を入力していく。アカウント有効を YES にする。

アカウント名は表示の識別用なのでなんでもよい。(ここでは ippi とした)

SIPサーバとアウトバウンドプロキシは sip.ippi.com と入力する。

SIPユーザIDに ippi のアカウント名、認証パスワードに ippi のパスワード を入力する。

保存して適用 をクリックする。

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アカウントアカウント1(またはアカウント2)、ネットワーク設定 に進む。

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NATトラバースを Keep-Alive にする。

保存して適用 をクリックする。

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アカウントアカウント1(またはアカウント2)、SIP設定基本設定 へ進む。

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ローカルポートを 20,000~65,500 くらいの適当な大きな数字(例えば、65412 など)にする。

この設定は外部から接続されるときにも使われる情報だが、ルータで静的マスカレードを設定しているなど特殊な環境下以外の LAN の NAPT配下に置かれた電話機に直接、Outbound Proxy以外の外部から SIP INVITE が来ることはない(総当たり攻撃の spam を除けば)のであまり意味を持たない。

強いて言えば、グローバルIPv4アドレスを持つような回線(OCNモバイルONE など)を使ったスマホアプリに設定する際に、UDP/IP 5060 などの spam に狙われやすいポートを開けていると外部から狙われるので、推測されにくい適当な番号を使っておいたほうが良いだろう。

保存して適用 をクリックする。

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状態、アカウント状態で確認すると SIP登録が YES になって、SIP REGISTER できていることが確認できる。

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ippi Dashboard からも確認できる。

コーデックの設定

ippi ではコーデックに ITU-T G711μ(PCMU)、G.711A(PCMA)、GSM、G.723、G.729、iLBC が使える。

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アカウントアカウント1(またはアカウント2)、音声設定 に進む。

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ippi で対応していないコーデックの欄は PCMU にしておく。

ジッター・バッファ長は 100ms にする。通話中に途切れるようなことがあれば、少しづつ伸ばしていく。光ファイバなどの固定回線であれば、100ms もあれば十分なはずだ。

保存して適用 をクリックする。

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オススメの設定

デフォルトのままでも、NAPT配下にあればほぼ無いと思うが NAT を使っている場合などは外部から総当りで攻撃してくる SIP spam で接続されてしまう可能性がある。

アカウントアカウント1(またはアカウント2)、SIP設定セキュリティ設定 に進む。

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プロキシから受信する SIP のみを許可します、を YES にすると、アウトバウンドプロキシで設定したサーバからのパケット以外は破棄する。

受信INVITE の SIPユーザID を確認する、を YES にすると、アカウント1 で設定した SIPユーザID 宛のパケット以外は破棄する。しかし、ippi の便利な機能として、メインの SIP URI の他に数字のみのエイリアスのアドレスが割り振られてその数字アドレス宛でも通話を受けることができるが、ここを YES にしてしまうと数字アドレス宛の通話は拒否してしまう。

なお、ippi は TCP/IP 5061ポートを使った TLS に対応しているので、アウトバウンドプロキシに sips.ippi.com:5061 を設定したところ、SIP REGISTER はできた。しかし実際に通話してみると、ネットワークによって(具体的には、同じ LAN内の端末同士)片通話になったり、終話が相手に通知されなかったり、発信できないことがあったりと、安定して使える設定が見つけられなかったので本記事では UDP/IP 5060 を使った設定を紹介した。

ippi から発信する

以上の設定で、GXP1625 から発着信できるようになっているはずだ。まずはスマホの GS Wave に設定してある他の ippi のアドレス宛に発信してみる。

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発信中の様子。

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少し見づらいが、ippi の SIP URI から掛かってきていることがわかる。

ippi で着信する

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今度は逆にスマホにインストールした GS Waveアプリに収容した TELNYX から ippi の SIP URI宛に発信してみる。

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frank(TELNYX の SIP URI) から掛かってきていることがわかる。

コーデックに ITU-T G.711μ(PCMU) を使っているので遅延も感じず、音質がとても良い。

まとめ

ippi のような SIP URI を使う IP電話の場合、宛先の SIP URI を指定するのにアルファベットの入力を必要とするため、本記事で紹介したような SIP固定電話機に設定すると不便があるため、通常は SIP電話アプリを使うと思う。

しかし、ippi の場合は ippiユーザ同士であれば、番号だけを使った SIP URI(Numeric SIP URI)も発行されるのでこれを使うことで、ダイヤルのプッシュで通話することができる。もちろん、電話帳機能を活用することで、SIP URI宛の通話であっても取り扱うことができる。

ippi のアカウントはサインアップと SIP URI での通話を使うだけなら無料で使えるので、いくつかのアカウントを取得しておいて、各SIP電話機に設定しておけば、内線通話のように使うことができる。

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※1 : TLS が使えない。ポート番号を 5060以外に変えられない。SRTP が使えない。G.729aコーデックが使えない。
※2 : G.729aコーデックが使えない。


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