前回の記事で YAMAHA NVR510 をひかり電話の内線として使う方法を紹介した。
今回は、050 IP電話サービスである、楽天コミュニケーションズ(旧フュージョン・コミュニケーションズ)の SMARTalk を YAMAHA NVR510 で使う方法を紹介する。
FUSION SMARTalk とは基本料無料で SIPアカウントを払い出し、DID の 050番号も付与されるというサービスで 050 IP電話系サービスの中ではそれなりに老舗でユーザも多いと思われるが、近年は新規ユーザの募集を停止しており一部ではサービス終了も噂されている。
これは他の 050系IP電話事業者全般で似たような傾向になっている。これまで、ほとんど本人確認しないで番号の払い出しを行っていた 050番号が特殊詐欺などで多用される現状から、総務省が各キャリアに新規で番号を発行する際は犯罪移転収益防止法に基づく本人確認を要請している。楽天フュージョンでは無料サービスのままではこの対応が容易ではないため新規申込みを中断しているものと考えられる。同業他社では、eKYC対応アプリなどを使って、申込者の運転免許証を撮影させるなどして本人確認を行っているケースもある。(蛇足ながら、SMARTalk は支払いにクレジットカードしか使えないが、足のつきやすいクレジットカードは組織犯罪では使われにくい。同じくクレジットカード支払いのみ対応している NTT Com の 050 plus では eKYCアプリによる本人確認などはなく、既存電話番号へのコールバックと、登録住所宛へのハガキの送付をもって確認済みとしている)
しかし、基本料が無料だったことからアカウントを持っているだけというユーザがそれなりの数居るはずで、SMARTalk のユーザ同士なら通話料も無料なのでアプリ通話が普及する前は、家族間での通話などで活用していた人も多いのではないだろうか。
Grandstream の FXS ATA を使って SMARTalk の番号を家の固定電話として使うための設定方法を他の方がウェブで紹介しているので、この記事では同様に YAMAHA NVR510 を使って SMARTalk を固定電話として使う方法 を紹介する。
SMARTalk のマイページにログインし、ユーザアカウント情報というタブをクリックすると、SIPアカウント情報が表示される。
必要なのは ドメイン、SIPアカウント、SIPパスワードの 3点だ。
ドメインは全ユーザ共通で、smart.0038.net になっている。SIPアカウントは自身に割り当てられた 050番号から、先頭の 050 を除いた電話番号の下8ケタになっている。(初期のユーザだと、8150 から始まる E.164形式の電話番号を使っていることもある)
analog arrive number display 1 on
analog device type 1 any
analog local address notice 1 on
analog use 1 on
analog sip arrive permit 1 myname
analog sip call permit 1 on
analog sip call myname 1 sip:5800xxx4
analog supplementary-service pseudo call-waiting
analog extension dial prefix sip prefix="9#"
analog extension dial prefix port=1 sip server=1002
sip use on
sip ip protocol udp
sip log on
sip server 1002 smart.0038.net register udp sip:5800xxx4@smart.0038.net 5800xxx4 Gkxxxxgf
sip codec permit lan2 g711u
インターネットへの接続などの設定は省略し、電話関係の設定だけ抜粋した。
sip serverコマンドで SIPアカウント情報を設定する。フォーマットは、
になっている。
SIPサーバアドレスはマイページで確認した ドメイン、SIP URI は、sip:(SIPアカウント)@(ドメイン) を入力する。
見づらくて申し訳ないが、NVR510 に接続したアナログ電話機から、SMARTalk の番号で発信したものが掛かってきた様子。
ちゃんと、SMARTalk の番号から掛かってきていることがわかる。もちろん着信して通話することもできる。SMARTalk はコーデックとして PCMU が使えるが、内部でなんらかの帯域の狭いコーデックに変換しているようで、G.729a で通話しているかのような音質になり、若干の遅延も感じる。
analog sip arrive permit 1 myname
analog sip call permit 1 on
analog sip call myname 1 sip:5800xxx4
ひかり電話の HGW配下など、NAT環境下にある場合はあまり関係ないが、グローバルな IPv4アドレスを使う設定(例えば、NVR510 から PPPoE で ISP と接続している場合)にしている場合、ルータに付与された IPv4アドレスの UDP/IP 5060ポート宛に有象無象の spamパケットが飛んでくる。
これらの spamパケットは、設定がザルになっているシステムを探すために機械的に行われているもので大量のパケットを送りつけてくるため、着信側でフィルタリングする必要がある。
もちろん、ip filter を使って事前に IPレベルで落としてしまうのがよい。しかし、ネットボランチ電話アドレスを使って外部と通話する可能性がある場合など、通話する相手の IPアドレスを限定できない時は、ip filter ですべて落とすことができないので、analog sip arrive permit コマンドで着信する通話を限定する。
analog sip arrive permit 1 myname と設定した場合、外部から飛んでくる SIP INVITE のパケットのうち、宛先が analog sip call mynameコマンドで設定した SIP URI 宛のもの以外は応答しない。
SMARTalk の 050番号宛に掛かってきた通話は SMARTalk の PSTN-SIPゲートウェイで SIP に変換され、この際に SIPアカウント宛の通話としてパケットを投げてくるのでこれを着信すれば良い。
いくつかの SIPサービスに登録しているなど、着信側の SIP URI の候補がいくつかある場合は、analog sip arrive myaddress コマンドを使うことで、最大
65,536個65,535個の SIP URI を登録しておくこともできる。
ODN IP | 050 plus | イオン050 | ひかり電話 | SMARTalk | ippi | その他 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
GS Wave | アプリ | note | 050 plus | イオン050 | 執筆予定 | 執筆予定 | ippi | TELNYX |
MizuDroid | アプリ | ODN IP | 050 plus | イオン050 | 執筆予定 | SMARTalk | ||
MicroSIP | PCソフト | ODN IP | 050 plus | 執筆予定 | 執筆予定 | ippi | TELNYX | |
YAMAHA NVR510 |
FXS ATA | ODN IP | 設定不可※1 | 設定不可※1 | ひかり電話 | SMARTalk | ||
GS HT802 | FXS ATA | ODN IP | 050 plus | イオン050 | ひかり電話 | |||
GS GXP1625 | SIP電話機 | note | 050 plus | 執筆予定 | ひかり電話 IPv6 |
SMARTalk | ippi | |
GS GRP2613 | SIP電話機 | note | イオン050 | |||||
GS WP820 | Wi-Fi電話機 | note | 050 plus | イオン050 | ||||
Poly Edge B30 |
SIP電話機 | 執筆中 | 050 plus | イオン050 | ひかり電話 | |||
Poly VVX250 |
SIP電話機 | ODN IP | 050 plus | 執筆予定 | ひかり電話 | SMARTalk | ippi | |
その他 | Acrobits Softphone Sipnetic Calls |
Acrobits Softphone Sipnetic (設定不可※2) |
Sipnetic Acrobits Softphone |
※1 : TLS が使えない。ポート番号を 5060以外に変えられない。SRTP が使えない。G.729aコーデックが使えない。
※2 : G.729aコーデックが使えない。