いろ電話研究所の研究日誌

ippi、無料で使える SIP URI

2022-06-13 18:06
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以前の記事で無料で使える SIP URI を発行してくれるプロバイダーとして、TELNYX を紹介した

SIP URI を持っていれば 世界中の SIP URI を持つユーザ同士で通話料無料で通話できる ので、SIP URI は本来はインターネットに接続する全ユーザが持つべきものなのに、日本では取得が難しいため SIP URI を持っている人がほとんど居ない。

TELNYX は各種有料のオプションがあるものの、サインアップするだけで無料の SIP URI が払い出され、その SIP URI を使って SIP によるコネクティビティを持つ全世界のユーザ(実質、無料アプリや無料ソフトをインストールするだけなので、インターネットにつながる全員を意味する)からの着信を受けることができる。

しかし、TELNYX にもちょっとした制約があって、TELNYX から SIP URI を使って発信することができなかった。(前記事で紹介したように、回避方法がある)

その記事の中で、別の SIP URI を発行してくれるプロバイダーとして OnSIP の名前を出したが、OnSIP はちょっと紹介しづらい事情があって、別のプロバイダーを探していたところ良さそうなサービスを見つけたので紹介したい。

なお、OnSIP を紹介しづらい事情というのは大したことではないが、サインアップにあたって米国の電話番号の入力を求められること、各種オプションを使うためにクレジットカードの登録が必要だが、このクレジットカードを登録する際に米国の住所を必要とする点だ。無料サービスの範囲内で使うだけならクレジットカードの登録は必要ないが、なんらかの(Twilio の DID用番号でも良い)米国の電話番号が必要になる。

世界中で無料通話、VoIP to VoIPコール

TELNYX を紹介する記事の中でも触れたが、なぜ SIP URI を取得したいのか、SIP URI があるとなにがうれしいのか、というもっと根本のところを再度説明しておく。電話の世界(PSTN)では通話先を指定するのに相互に電話番号を使っている。電話番号を使った通話では電話会社の設備維持、収益のため、通話料という形でインフラ代を負担している。

その一方で我々は ISP代を払ってインターネットにも接続しており、インターネット上であれば常識的な範囲内であれば通信はどれだけ行っても追加料金は必要ない。(もちろん、スマホ回線の場合は使ったパケット量に応じた従量制の料金設定もあるが、VoIP で使うパケット量は微々たるもの(高ビットレートの G.711μ を使った場合でも 300MB以下/時間。低ビットレートの Opus なら 72MB以下/時間)であり、定額と言って良い範囲でしか帯域を使わない)

そのすでに接続済みの(=固定料金を支払っている)インターネットを使って通話してしまえば、通話料を負担することなく世界中の人と通話することができる。これがいわゆる VoIP だ。

VoIP の世界では電話の世界の電話番号に変わり、通話相手を指定するのに URI を使う。2022年現在、VoIP界ではほぼ 100%、SIP という仕組みを使い、この SIP の世界で相手を特定する手段が、SIP URI になる。

おさらいになるが、SIP URI は、

sip:username@sip-domain

というフォーマットになっている。前回、TELNYX で取得した SIP URI は、sip:alice48782@sip.telnyx.com だった。

SIP URI を持ったユーザ同士はインターネットさえつながっていれば、相互に通話料無料で通話できる、というのが VoIP to VoIPコールだ。

企業などでも本社と事業所を VPNなどで接続し、通話料がかからずに内線電話ができるシステムが構築されていることもあると思うが、あれも内部的には VoIP to VoIPコールを使っている。PSTN を使わないので通話料が必要ない、という仕掛けになっている。(KDDIなど、電話会社が提供する同一契約者の複数拠点間での通話が無料になる仕組みも、細部は違うが電話会社内部で運用コストの安い VoIP を使っており、他社への接続料の支払いなどのコストがほとんどかからないので通話料を無料に設定できる)

SIP URI さえ持っていれば(そして適切に設定された電話機やアプリがあれば)、使っているインターネット回線、ISP などにしばられず、相互に無料で通話できる仕組みなのに、日本では SIP URI を発行してもらう良い方法がないためまったくと言ってよいほど使われていないのが現状なのだ。

フランス企業、ippi

今回紹介する ippi という SIPプロバイダーは 2007年にフランス、パリで創業した企業、Worldline Communication SAS社の事業でメインの事業としては月額固定の DID SIPアカウントの払い出しを行っている。

有料プランへのステップアップを狙ったユーザ獲得の入り口として無料プランを用意しており、SIP URI の発行と SIP URI を使った VoIP to VoIPコールのみ、無料で使えるようになっている。電話番号を使った外部の PSTN との通話には、月額9.99~29.99€ の有料プランにアップグレードする必要がある。

あっけないほど簡単なサインアップ

米国のサービスは、高機能であれこれやれるものが多い反面、使い始めるまでの設定も必要なことが多く、いざ使ってみようと思っても SIPアカウントの払い出しまでで頓挫してしまうこともある。

しかし、ippi はとてもシンプルで、希望のユーザ名、パスワード、連絡先の電子メイルアドレスを入力してサインアップすると電子メイルが届き、このメイルに書かれた URL へアクセスするだけで自動で SIPアカウントの払い出しまで終わる。

なお、デフォルトで払い出される SIPアカウントは ユーザ名@sip.ippi.com になっており、とてもわかりやすい。デフォルトのパスワードも管理画面へのログインパスワードと同じになっている。(変更可能)

(サービスは終了したが)無料通話のための iNum番号

ippi の面白いサービスとしては、iNum という世界共通でユーザ同士が通話料無料で通話するための電話番号を発行していた。これは国際番号 +883 を付与した、+883-5100 から始まる電話番号で iNum に通話できる多くの電話会社の回線から無料かほぼ無料で通話できるというサービスだったが、基盤提供元のベルギーVoxbone社が 2020年6月でサービスを終了してしまったため、ippi での iNum番号の払い出しも行われていない。

バックグラウンドとしては、iNum番号を持つ全ユーザに sip:(iNum番号)@inum.net という SIP URI が発行され、電話会社間ではこの SIP URI に対してコールするだけだったのでコストが掛からず、無料で提供できるという仕組みになっていた。(SIP URI による通話なので、iNum は電話会社に対して接続料を要求しない)

日本ではまったく普及しなかったため、NTTコミュニケーションズなど日本の大手キャリアからは +883-5100 で始まる電話番号へ通話することはできなかったが、Google Hangout や Skype からは通話できたので異なるサービスからの通話を通話料無料で受けられる手段としては面白かったと思う。

Grandstream GS Wave から使う

いつものスマホ用アプリ、Grandstream GS Wave の設定から紹介する。

なお GS Wave はアプリストアでは Grandstream Wave Lite - Video という名前になっていて紛らわしい上、似たような名前の違うアプリもあるので注意する。

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SettingsAccount Settings に進み、右上の + をクリックして新規アカウントを追加する。

SIP Account をクリックする。(ippi は専用の設定画面も用意されているが、他のソフトでも応用できるよう、あえて汎用の SIP Account での設定を紹介する)

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入力するのは、SIP SeverSIP User IDPassword の 3点だ。

SIP Server は全ユーザ共通で、sip.ippi.com、SIP User ID と Password は ippi にサインアップした際のユーザ名とパスワードをそのまま入力する。

一旦、右上の ✓ をクリックしてアクティベートする。

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NETWORK SETTINGSOutbound Proxysip.ippi.com を入力すれば設定完了。これでもう通話できる状態になる。

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ippi Dashboard から SIP REGISTER されている様子が確認できる。

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sip:test@sqm.onsip.com に通話してみる。

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着信して通話できる。

発信して通話も可能。

MicroSIP から使う

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MicroSIP のアカウント設定は次の通り。

アカウント名は MicroSIP上での表示なのでわかりやすい名前でよい。私は SIP URI にしてある。

SIPサーバSIPプロキシドメインsip.ippi.com で固定。

ユーザ名とパスワードは ippi のダッシュボードにログインするときと同じものを入れればよい。

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