いろ電話研究所の研究日誌

050 plus を MicroSIP で使う

2022-08-29 10:39
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前回の記事で ODN IPフォンを MicroSIP で使う方法を紹介した。今回の記事では、MicroSIP で 050 plus を使う方法を紹介する。

050 plus は NTTレゾナント(2022年7月に NTTコミュニケーションズからサービス移管)が提供する 050 IP電話サービスで、少し特殊な設定が必要なものの、標準的な仕様の SIP が使えるソフトウェアから使うことができる。

なお、050 plus は IP電話サービスとしては珍しく、Windows用の専用ソフトウェアを公開しているので、これをインストールするだけで使うことができる。本記事は、なんらかの理由で純正の専用ソフトウェアが使えない場合、専用ソフトウェアでは設定できない設定項目がある場合などに参考にしてほしい。

MicroSIP とは

IP電話でデファクトスタンダードとして使われる、SIP による IP電話のソフトウェアを実装するためのライブラリとして pjsip がある。pjsip はライブラリなので、ユーザが直接使うことはできないので、これを GUI での操作として取り扱うためのソフトウェアの一つがこの記事で紹介する MicroSIP になる。

pjsip は広く使われていて、オープンソースの IP-PBX として非常にメジャーな Asterisk でも、SIP を取り扱うためのモジュール、chan_pjsip として実装している。(初期の頃のバージョンでは、pjsip を使わない、chan_sip も使っていた)

MicroSIP は IP電話に必要な最低限の機能だけをシンプルに実装したソフトウェアで、個人的にもっとも長く使用している IP電話ソフトウェアなのでとてもオススメできる。日本語で使用できる。

050 plus の SIP情報

こちらも再掲となるが、curl コマンドで取得することができる。面倒であれば、ブラウザから 050 plus の SIP情報を取得できる HTML を公開している人がいるので、それを使用する。

curlコマンドは、

% curl \
-X POST \
--header "User-Agent: hoge" \
--data 'ifVer=7.0&apVer=2.0.4&buildOS=IOS&buildVer=5.1&buildModel=Android&earlyStFlg=0&no050=(050電話番号)&pw050=(パスワード)' \
https://start.050plus.com/sFMCWeb/other/InitSet.aspx \
>050plus-0503690xxxx.xml

このコマンドを実行するとアカウント情報が、050plus-0503690xxxx.xml に保存される。

xmllintコマンドで中身を見ると、

% xmllint --format 050plus-0503690xxxx.xml
<?xml version="1.0"?>
<replyInfo>
 <resultInfo>
   <resCd>N0000</resCd>
   <resMsg>正常に終了しました</resMsg>
   <errCd/>
 </resultInfo>
 <resultEarlySt>
   <sipID>ThisIsSIPID</sipID>
   <sipPwd>ThisIsSIPPassword</sipPwd>
   <tranGwInfo>
     <tranGwAd>kar-f2fcp.050plus.com</tranGwAd>
     <payTranGwPNm>443</payTranGwPNm>
     <freeTranGwPNm>5075</freeTranGwPNm>
     <nicNm>fmc3690xxxx</nicNm>
     <pingTm>600</pingTm>
     <pongTm>120</pongTm>
   </tranGwInfo>
   <ticketInfo>
     <ticketEx/>
   </ticketInfo>
   <chargPlan>02</chargPlan>
   <frdCd>301TSQ49</frdCd>
   <rNo050>0503690xxxx</rNo050>
   <rDistingId>xxxxxxxxx</rDistingId>
 </resultEarlySt>
</replyInfo>

必要な情報は、tranGwAdpayTranGwPNm(SIP REGISTER する際の SIPサーバ、並びに SIP Proxyサーバ、ポート番号)、nicNm(SIP Username)、sipID(SIP Auth Name)、sipPwd(SIP Password)なのでこれをメモする。

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nicNm は、fmc + (電話番号から先頭の 050 を除いたもの)になっているはずだ。sipID と sipPwd は英数字のランダムな文字列が使われている。

MicroSIP の設定

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これが起動した状態。普段遣いしているものなので、インストール直後とは表示内容が少し違う。

Windows であればタスクトレイに常駐しているので、アイコンをクリックすると画面の右下に立ち上がってくる。

右上の、 をクリックする。

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アカウントの追加 をクリックする。

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アカウント名は識別用なのでなんでもよい。(ここでは 050 plus とした)

SIPサーバに 050plus.com(イオンモバイルの場合は 050sdk.com)、 SIPプロキシに kar-f2fcp.050plus.com:443(イオンモバイルの場合は kar2-f2fcp.050sdk.com:443)と入力。

ユーザ名に設定情報で取得した nicNm、ドメインに 050plus.com(イオンモバイルの場合は 050sdk.com)、ログインに sipID、パスワードに sipPwd を入力する。

音声/映像暗号化を 必須SRTP (RTP/SAVP) にする。

トランスポートを TLS にする。

保存 をクリックする。

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右上の、 をクリック、設定 をクリックする。

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050 plus は NAT超えが不要なので、STUNサーバのチェックは外す。

保存 をクリックする。

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左下のステータスがオンラインになり、SIP REGISTER できたことがわかる。またアイコンに鍵マークが付いており、トランスポートに TLS を使っていることがわかる。

コーデックの設定

050 plus ではコーデックとして ITU-T G.729A しか使えないのでコーデックを設定する。

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右上の、 をクリック、設定をクリックする。

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G.729 8kHz のみを有効欄に配置し、保存 をクリックする。

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オススメの設定

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コールウェイティングは NTT東西で言うところのキャッチホンのことだが、非対応なのでチェックを外す。

システム起動時に実行にチェックを入れておくと、Windows が起動したときに自動的に常駐するようになる。

050 plus から発信する

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スマホに収容した Lala Call の電話番号へ発信。

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着信の様子。050 plus の電話番号(050-3690-xxxx)から掛かってきていることがわかる。

050 plus で着信

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スマホに収容した Lala Callアプリから 050 plus の番号宛に発信。

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Lala Call の電話番号(050-7xxx-2500)から掛かってくる。

Lala Call 側がビットレートの低い G.729a などのコーデックを使っているので音質については評価できないが、遅延などは感じない。

まとめ

050 plus は月額330円(税込み)でプロバイダフリーに使える SIPアカウントを払い出してくれる数少ないサービスではあるものの、SIP の標準的な設定(UDP/IP 5060ポート、非SRTP、PCMUコーデックで使う)が使えないことで、少し敷居は高いものの、一度設定してしまえば安定して使えるのでとてもオススメのサービスだ。

コツとしては、SIP URI が nicNm @ 050plus.com になる、認証の SIP Domain が 050plus.com、SIP AuthName が sipID、SIP AuthPassword が sipPwd になる、Outbound Proxyサーバとして kar-f2fcp.050plus.com:443(transGwAd : payTransGwPNm)を使う、コーデックとして G.729A を使う、といった要点さえ抑えておくと良い。特に着信はするのに発信できないといったトラブルが出ているときは、コーデックの設定が間違っていることが考えられるので(PCMU などを提案してしまっている)、今一度、設定が上記の組み合わせになっているか、見直してみること。

イオンモバイルで提供される話し放題の 050 IP電話オプションも中身としては 050 plus の OEM版(050 SDK)なのでほぼ同じ設定で動くはずだ。イオンモバイルで使う場合は SIP URI が nicNm @ 050sdk.com、認証の SIP Domain が 050sdk.com、Outbound Proxyサーバが kar2-f2fcp.050sdk.com:443 と読み替えて設定して欲しい。

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※1 : TLS が使えない。ポート番号を 5060以外に変えられない。SRTP が使えない。G.729aコーデックが使えない。
※2 : G.729aコーデックが使えない。


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