Grandstream の FXS ATA、HT802 をひかり電話の内線として使うときの設定を紹介する。
NTT東西のひかり電話、光コラボ各社の光回線の 0AB~J IP電話サービス、SoftBank の光電話(N) などを使うとき、NTT東西や光コラボISP からレンタルする HGW(ホームゲートウェイ)には、アナログ電話機を使うための FXSポートが 2クチ付いてくる。
いま使ってるアナログ電話機をこの FXSポートに差し込むだけで、加入電話とほぼ同じように使うことができるようになっている。
市販のコードレス電話機などを使えば、コードレス電話機の機能で電話機同士の内線通話などができるようになっているが、実は HGW 自体にも内線通話の機能があって、2 つの FXSポートにつないだ電話機同士で内線通話をすることができる。
それだけでなく、この HGW はとても高機能な機械で、簡易な SIPサーバも搭載しているので SIP対応の IP電話機も子機として使うことができる。
FXSポートにつないだアナログ電話機 2台と IP電話機(最大5台まで)の計7台は外線を共有し、かつ互いに内線通話することができるので小規模な事業所だとビジネスホンすら要らなくて、この HGW の内線機能だけでもある程度の業務はできてしまう。
SIP対応の IP電話機はハードウェアとしてはほとんど流通していない(Grandstream、Yealink、Cisco などの各種製品はある)のでスマホにインストールした SIP対応VoIPアプリ(Grandstream GS Wave など)から使うことになる。
使い慣れたアナログ電話機を使いたい場合、標準では 2台までしか接続することができない。しかし、SIP用の内線を FXS ATAゲートウェイに収容してしまえば、こちらもアナログ電話機で使うことができるようになる。
SIP用の回線をアナログ電話機で使うための変換を担ってくれるのが、FXS ATAゲートウェイという機械だ。
今回紹介する HT802 は、米国Grandstream社のベストセラーで、2回線分の FXS ATAゲートウェイとして使うことができる。1回線だけ収容できる兄弟機、HT801 もあって設定はほぼ同じなのでどちらでも同じように使える。(HT802 なら同じ場所で 2台が使える)
2022年6月現在は新機種である HT812 も販売されているが、こちらも設定などはほぼ同じように使うことができる。
アナログ電話機の場合は物理的に配線が要るので HGW から電話線でつながったところにしか電話機を設置できないが、SIP内線 + FXS ATAゲートウェイの構成なら、IP部は Wi-Fi なども使えるので使い方次第では便利な子機が設定できることになる。
まずは、HGW で SIP回線を収容するための設定を行う。
HGW の設定画面(http://ntt.setup/、http://192.168.1.1/ など)にアクセスし、電話設定、内線設定の画面に進む。
内線番号一覧のうち、上の 2行が HGW の FXSポート、下の 5行が SIPフォン用になっている。
使っていない SIPフォン用の行の、編集をクリックする。
端末属性を音声専用端末に、ダイジェスト認証を行う、にして内線番号、ユーザID、パスワードをメモする。
設定をクリックすると設定内容が保存されるので、戻るをクリックして一覧に戻る。
次に、HT802 の設定画面から設定する。今回は FXS PORT 2 を使っているが、PORT 1 でも PORT 2 でも設定できる項目は同じなのでどちらを使っても構わない。
Account Active を Yes。
Primary SIP Server と Outbound Proxy に、ntt-west.ne.jp:5060。(NTT東日本でお使いの場合は、ntt-east.ne.jp:5060)
SIP Transport を UDP。
SIP URI Scheme When Using TLS を sip。
NAT Traversal を Keep-Alive。
SIP User ID に HGW で設定した内線番号。
Authenticate ID に HGW で設定したユーザID。
Authenticate Password に HGW で設定したパスワード。
HGW の配下に、さらに Wi-Fiルータなどを介していて 2重NAT になっている環境も考えられるが、今回は HGW の LANポートに直接接続することを想定しているので、NAT超え関係の設定は行っていない。
もし、HT802 が NAT配下にある場合、いくつかの項目で調整が必要かもしれない。
Enable SIP OPTIONS/NOTIFY Keep Alive は No。
(一部の HGW では、OPTIONS に対応していないため)
ここは特に設定が必要な項目はない。Check SIP User ID for incoming INVITE や Authenticate incoming INVITE などは野良SIP INVITE を防ぐための設定だが、HGW の NAT配下にあれば外部から SIP INVITE が来ることはないので No のままでも良い。もしなんらかの事情で静的マスカレード設定を行っていて外部の IPアドレスからリーチャビリティがある場合は、Yes にするなど対策が必要になる。
ここも特に設定の必要はないと思われる。
Call-Waiting は NTT東西でいうところのいわゆるキャッチホンの設定。
ここも特に設定が必要な項目はない。
No Key Entry Timeout は電話番号をプッシュしおわってから、指定時間が経つと自動でコールを始めるというもの。ゆっくりプッシュするなど、4秒で早すぎる時は適宜長くする。もし長くした場合も、Use # as Dial Key を Yes に設定しておけば、電話番号の最後に # をプッシュすれば、時間を待たずにコールを開始する。
Disable # as Redial Key は # キーだけプッシュしたときに、リダイヤルとして動作する機能を使うか否かという項目。Yes にするとリダイヤル機能が動作しなくなる。(電話機側についているリダイヤル機能とは無関係なので、電話機側のリダイヤル機能を使う場合はどちらに設定しても問題ない)
Anonymous Call Rejection は非通知、通知不可能などの通話をとらない設定。
Preferred Vocoder は choice 1 から 8 まですべて PCMU にしておく。ここの設定をちゃんとやらないとトラブルの元になる。(ひかり電話、HGW は PCMU のみ対応)
SRTP Mode は Disabled。
SLIC Setting は JAPAN CO。
Caller ID Scheme は NTT Japan。
ナンバーディスプレイ非対応電話機をつなぐ場合、本当は Disabled にしたいが、いまのところ設定を変えることができない。(ナンバーディスプレイ非対応電話機を接続すると、ベルが鳴るときに本来の呼び出し音の前に短くベルが鳴る。本来の呼び出し音を待ってとれば通話できる)
このあたりの項目は、ベルの呼び出し音などを各国の仕様にあわせて変更できる。デフォルトだと米国で使われているベル音になっているので、違和感がある場合はチューニングする必要がある。米国仕様のままでよければデフォルトのままで良い。
このあたりは、電話機を使った特殊な操作(HT802 の設定を変更するなど)のための特番の設定なので使わないのであればそのままでよい。特番を使う時は、*のあとに特番をプッシュする。
例えばデフォルトだと、Call Waiting(キャッチホン)の on/off に特番 51/50 が割り当てられている。
Call Waiting を使う場合は、*51 へ電話する。Call Waiting を無効にする時は *50 へ電話する。などといった使い方をする。(テストしたところ、なぜか *51/50 は動作せず)
ここもヴォコーダーの設定。
PCMU Codec Feature だけ Yes にして、あとはすべて No にする。
最後に、Apply をクリックして設定を適用する。
STATUS のタブを見ると、FXS 2 の Registration が Registered になっているはずだ。
HGW の内線設定でも、該当の行が登録済みになっていることが確認できる。
見づらくて申し訳ないが、HT802 に接続したアナログ電話機から外線発信で携帯電話に掛けた場合の着信画面。
もちろん、ちゃんと通話できる。
逆にひかり電話宛に掛けてみると、アナログ電話機のベルが鳴って電話を受けることができる。(当たり前だ)
ナンバーディスプレイ対応アナログ電話機の写真が用意できなかったが、後日、追加する予定。
HT802 は IPv6 にも対応しており、HGW はもちろん IPv6対応なので、IPv6 を使うこともできる。NAT超えなど、余計なことを考えるくらいなら LAN では IPv6 を使ってしまうのも手だ。
と思って設定してみようとしたが、DHCPv6 の環境で接続してみてもうまく IPv6アドレスがアサインできないので、いまのバージョンでは使えないようだ。リンクローカルのアドレスは拾ってくるものの、これだと HGW の SIPサーバへ接続できない。そもそも、FXS PORT の IPアドレスのフォーマットも書き方が不明だ。
試しに Static Address も設定してみたが、そちらでも動かなかった。
いまのとのろ、HT802 を IPv6 で使うのはあきらめるしかなさそうだ。
ODN IP | 050 plus | イオン050 | ひかり電話 | SMARTalk | ippi | その他 | ||
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GS Wave | アプリ | note | 050 plus | イオン050 | 執筆予定 | 執筆予定 | ippi | TELNYX |
MizuDroid | アプリ | ODN IP | 050 plus | イオン050 | 執筆予定 | SMARTalk | ||
MicroSIP | PCソフト | ODN IP | 050 plus | 執筆予定 | 執筆予定 | ippi | TELNYX | |
YAMAHA NVR510 |
FXS ATA | ODN IP | 設定不可※1 | 設定不可※1 | ひかり電話 | SMARTalk | ||
GS HT802 | FXS ATA | ODN IP | 050 plus | イオン050 | ひかり電話 | |||
GS GXP1625 | SIP電話機 | note | 050 plus | 執筆予定 | ひかり電話 IPv6 |
SMARTalk | ippi | |
GS GRP2613 | SIP電話機 | note | イオン050 | |||||
GS WP820 | Wi-Fi電話機 | note | 050 plus | イオン050 | ||||
Poly Edge B30 |
SIP電話機 | 執筆中 | 050 plus | イオン050 | ひかり電話 | |||
Poly VVX250 |
SIP電話機 | ODN IP | 050 plus | 執筆予定 | ひかり電話 | SMARTalk | ippi | |
その他 | Acrobits Softphone Sipnetic Calls |
Acrobits Softphone Sipnetic (設定不可※2) |
Sipnetic Acrobits Softphone |
※1 : TLS が使えない。ポート番号を 5060以外に変えられない。SRTP が使えない。G.729aコーデックが使えない。
※2 : G.729aコーデックが使えない。