前回の記事で ODN IPフォンを Acrobits Softphone で使う方法を紹介した。今回の記事では、Acrobits Softphone で 050 plus を使う方法を紹介する。
050 plus は NTTレゾナント(2022年7月に NTTコミュニケーションズからサービス移管)が提供する 050 IP電話サービスで、少し特殊な設定が必要なものの、標準的な仕様の SIP が使える電話機から使うことができる。
Acrobits Softphone はチェコ共和国Acrobits社が開発するスマホ用アプリで、各種あるスマホアプリでは珍しく買い切りの有料アプリとして公開されている。同社は Groundwire という別の SIPアプリも販売しているが、Softphone は DID(1番号1アカウント)で使う個人ユーザ向け、Groundwire はビジネスホンの内線用として使うビジネスユーザ向けに設計されている。
いくつかの IP電話プロバイダの公式アプリは Acrobits社が開発、各社に OEM提供しており、知らないうちに同社の開発したアプリを使っているユーザも少なくない。
今回は Softphone の設定を紹介する。
こちらも再掲となるが、curl コマンドで取得することができる。面倒であれば、ブラウザから 050 plus の SIP情報を取得できる HTML を公開している人がいるので、それを使用する。
curlコマンドは、
% curl \
-X POST \
--header "User-Agent: hoge" \
--data 'ifVer=7.0&apVer=2.0.4&buildOS=IOS&buildVer=5.1&buildModel=Android&earlyStFlg=0&no050=(050電話番号)&pw050=(パスワード)' \
https://start.050plus.com/sFMCWeb/other/InitSet.aspx \
>050plus-0503690xxxx.xml
このコマンドを実行するとアカウント情報が、050plus-0503690xxxx.xml に保存される。
xmllintコマンドで中身を見ると、
% xmllint --format 050plus-0503690xxxx.xml
<?xml version="1.0"?>
<replyInfo>
<resultInfo>
<resCd>N0000</resCd>
<resMsg>正常に終了しました</resMsg>
<errCd/>
</resultInfo>
<resultEarlySt>
<sipID>ThisIsSIPID</sipID>
<sipPwd>ThisIsSIPPassword</sipPwd>
<tranGwInfo>
<tranGwAd>kar-f2fcp.050plus.com</tranGwAd>
<payTranGwPNm>443</payTranGwPNm>
<freeTranGwPNm>5075</freeTranGwPNm>
<nicNm>fmc3690xxxx</nicNm>
<pingTm>600</pingTm>
<pongTm>120</pongTm>
</tranGwInfo>
<ticketInfo>
<ticketEx/>
</ticketInfo>
<chargPlan>02</chargPlan>
<frdCd>301TSQ49</frdCd>
<rNo050>0503690xxxx</rNo050>
<rDistingId>xxxxxxxxx</rDistingId>
</resultEarlySt>
</replyInfo>
必要な情報は、tranGwAd と payTranGwPNm(SIP REGISTER する際の SIPサーバ、並びに SIP Proxyサーバ、ポート番号)、nicNm(SIP Username)、sipID(SIP Auth Name)、sipPwd(SIP Password)なのでこれをメモする。
nicNm は、fmc + (電話番号から先頭の 050 を除いたもの)になっているはずだ。sipID と sipPwd は英数字のランダムな文字列が使われている。
Acrobits Softphone を立ち上げると、個人情報の取り扱いについての同意を求められるので内容を確認して同意できるなら 同意 をタップする。
端末のマイクへのアクセス権限の付与を求めてくるので、NEXT をタップする。
許可 をタップする。
端末の電話機能と通話履歴へのアクセス権限、連絡先へのアクセス権限も求められるので 許可 していく。
前回の記事で ODN IPフォンを設定したので、アカウントを追加するため、設定、アカウントから右下の + ボタンをクリックする。
新しい SIPアカウント をタップする。
タイトルに識別のためのわかりやすい文字列(ここでは 050 plus と入力した)、SIPアカウントに nicNm、SIPパスワードに sipPwd、ドメインに 050plus.com(イオンモバイルの場合は 050sdk.com)を入力する。
詳細設定をタップする。
着信方法を プッシュ通知 にする。
プロキシに kar-f2fcp.050plus.com:443(tranGwAd : payTranGwPNm) と入力する。
認証ユーザ名に sipID を入力する。
トランスポート プロトコルを tls(sip) にする。
上へスクロールして、NATトラバーサルをタップする。
アウトバウンド プロキシをタップする。
有効に設定されました、を ON にする。
ホストに kar-f2fcp.050plus.com:443 を入力する。
トランスポート プロトコルを tls(sip) にする。
端末の 戻るボタン を 2回タップする。
セキュアコールをタップする。
SDES(RFC4568) の着信方法を 有効に設定されました にする。
発信コールを 必要です にする。
右上の ✓ をタップして設定を保存する。
左上の登録状況のアイコンが緑になれば SIP REGISTER に成功している。
登録されました になる。
050 plus では NAT超えで特殊な設定は必要ないため、STUN などの設定は不要。
050 plus ではコーデックとして ITU-T G.729A しか使えないのでコーデックを設定する。
右上のハンバーガーボタンをタップ、設定、アカウント、さきほど設定したアカウント(050 plus)、詳細設定をタップする。
オーディオコーデックの WiFi用のコーデックをタップする。
G.729A を有効化されたコーデックに加える。
戻るボタン をタップする。
モバイルデータ用のコーデックをタップする。
G.729A を有効化されたコーデックに加える。
右上の ✓ をタップして設定を保存する。
携帯電話宛に発信。
すこし見づらいが、050 plus の電話番号(050-3690-xxxx)から掛かってきていることがわかる。
FUSION SMARTalk (050-5800-xxxx)から 050 plus の番号宛に発信。
アプリを立ち上げていなくても、プッシュ通知を使って自動的に着信する。
通話中の様子。
遅延は気になるほどではないが、コーデックに ITU-T G.729A を使っているので音質は一昔前の国際電話並に悪い。
Acrobits Softphone は有料アプリではあるものの、数少ない日本語表示が可能なアプリということで一定数のユーザが居ると思われる。
正直、GS Wave が使えるのであれば設定のしやすさを含めて、GS Wave に軍配が上がるものの、Grandstream社はあまりメンテナンスに積極的とはいえず、いつ公開がとまってもおかしくないので、バックアッププランとして Acrobits Softphone は常にキャッチアップしていきたい。このアプリにどれほどの需要があるかわからないが、今後も機会があれば他の IP電話プロバイダーでの設定例も紹介していく予定だ。
ODN IP | 050 plus | イオン050 | ひかり電話 | SMARTalk | ippi | その他 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
GS Wave | アプリ | note | 050 plus | イオン050 | 執筆予定 | 執筆予定 | ippi | TELNYX |
MizuDroid | アプリ | ODN IP | 050 plus | イオン050 | 執筆予定 | SMARTalk | ||
MicroSIP | PCソフト | ODN IP | 050 plus | 執筆予定 | 執筆予定 | ippi | TELNYX | |
YAMAHA NVR510 |
FXS ATA | ODN IP | 設定不可※1 | 設定不可※1 | ひかり電話 | SMARTalk | ||
GS HT802 | FXS ATA | ODN IP | 050 plus | イオン050 | ひかり電話 | |||
GS GXP1625 | SIP電話機 | note | 050 plus | 執筆予定 | ひかり電話 IPv6 |
SMARTalk | ippi | |
GS GRP2613 | SIP電話機 | note | イオン050 | |||||
GS WP820 | Wi-Fi電話機 | note | 050 plus | イオン050 | ||||
Poly Edge B30 |
SIP電話機 | 執筆中 | 050 plus | イオン050 | ひかり電話 | |||
Poly VVX250 |
SIP電話機 | ODN IP | 050 plus | 執筆予定 | ひかり電話 | SMARTalk | ippi | |
その他 | Acrobits Softphone Sipnetic Calls |
Acrobits Softphone Sipnetic (設定不可※2) |
Sipnetic Acrobits Softphone |
※1 : TLS が使えない。ポート番号を 5060以外に変えられない。SRTP が使えない。G.729aコーデックが使えない。
※2 : G.729aコーデックが使えない。